疑問解決!フッ素と有機フッ素化合物の違いについて

皆さま、こんにちは。大和市鶴間にあるスギヤマ歯科医院、院長の杉山順一です。

さて、皆さまは子どものころ歯医者さんでフッ素を塗ったことはありますか?

歯科医院では、昔からむし歯の予防のために使っているものです。

一方、フッ素と聞いて有機フッ素化合物(通称PFAS-ピーファス-)を思い浮かべる方もあるかもしれません。

PFASは多くの化学的性質を持つことから日常家庭で使われるいろいろな製品の高性能化・高機能化に役立っていますが、その一方で人体や環境に対しての有害性が指摘されており、世界的な環境問題にもなってきています。

しかし、ここで重要なのは、機フッ素化合物と歯科で使っているフッ素(無機フッ素)はその組成が全く異なるものだという点です。

そこで今回は、歯科フッ素とPFASとの違いを書いてみます。

フッ素とは?

フッ素は自然界に存在する元素の一つです。自然界では主にフッ化物(フッ素が他の元素と結合した化合物)として存在します。

私たちが日常的に触れるフッ素の多くは無機フッ素化合物です。水や土壌中にも微量に含まれており、自然な環境下で私たちの生活に関わっている元素です。

有機フッ素化合物とは?

有機フッ素化合物とは、炭素とフッ素が結びついた有機化合物です。

そのうちペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物を総称してPFASと呼び、1万種類以上の物質があるとされています。

PFASはその種類によって、熱に強い、水や油を弾く、燃えにくい、汚れを防止する等の様々な性質があり、この性質を利用してフライパンのフッ素加工剤、靴や衣類の撥水加工剤、自動車のコーティング剤、スキーやスノーボードのワックス、ピザやハンバーガーの包装紙、消火器に含まれている消火剤など、私たちの身近なところで様々な形で利用されています。

しかし一方では有機フッ素化合物(PFAS)についての健康リスクや環境汚染の問題が取り上げられることがあります。環境残留性や蓄積性や長期毒性の疑いなどです。

PFASは非常に分解されにくく環境中に蓄積しやすいため、「永遠の化学物質」として環境汚染や人体への悪影響が懸念されてきているわけです。

便利だと思って使われて長年使われてきたのに、人体や環境への悪影響が判明して大きな環境問題になっているという点では、プラスチックと同じですね。

歯科で使われるフッ素の安全性について

一方、歯科で使われているフッ素の安全性と虫歯予防の有効性については何十年にもわたって研究が行われています。

虫歯予防のための水道水へのフッ素添加の試みは、アメリカやカナダ、オーストラリアなど多くの国で行われており、これにより虫歯の発生率が著しく低下したというデータがあります。

世界保健機関(WHO)も、フッ素が適切な濃度で使用されれば虫歯予防に非常に効果的で安全であるとしています

しかし適切な濃度を超えて過剰に摂取してしまうと「フッ素症」という症状が起こることがあります。

フッ素症には骨フッ素症と歯牙フッ素症があります。

骨フッ素症の症状としては関節の硬直、散発的な痛み、靭帯の石灰化があり、強い症状になってくると関節運動の制限、脊椎と関節の変形、筋消耗、脊髄圧迫がでてきて日常生活に支障をきたします。

歯牙フッ素症の症状としては「斑状歯」と言われる全ての歯に白い沁みのようなものがでてきます。重度なものになると茶色い沁みになります。ただしこれは非常に高濃度で長期間にわたって摂取した場合に限られます

フッ素症は飲料水にフッ素が多く含まれている国や地域で起こるようです。特に井戸水にフッ素が多く含まれたものを飲料水として常時生活に使用している地域にみられる傾向があります。

わが国では、フッ素入り歯磨き粉など日常的に使用される製品に含まれているフッ素は極めて低濃度であり、その安全性は厳格に管理されています。また、日本では水道水にフッ素は添加されていません

虫歯予防にフッ素を積極的に活用しましょう

虫歯の発生と進行は食生活や歯磨き習慣など生活習慣によっても左右されますが、フッ素の助けを借りることで虫歯リスクを大幅に低減させることができます。

特に小児の時期に、歯が生えてきたばかりの時にフッ素を作用させることは非常に効果的です。定期的にフッ素を塗布することや、フッ素入り歯磨き粉を使うことで、歯の表面のエナメル質を強化することで虫歯予防に役立ちます。

また、大人にとってもフッ素は重要です。加齢に伴い歯ぐきが後退して、歯の根っこの部分が口の中に露出することで根っこの部分に虫歯が発生しやすくなるため、この部分にフッ素を塗布することで歯を長持ちさせることができます

歯科医院での定期的なフッ素塗布に加えて、フッ素入りの歯磨き粉や洗口剤を家庭で使用することで、生涯にわたる口腔健康を守ることができます。

まとめ

歯科フッ素と有機フッ素化合物は全く異なるものであり、虫歯予防に使われるフッ素は安全が担保されています

虫歯予防の手段としては最も手軽でかつ効果の認められているものですから、正しい知識を持ち、フッ素をうまく生活に取り入れて健康な歯を作りましょう。

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